人の気持ちがわかる人は好かれ――
人の気持ちがわからない人は嫌われる――
それが――
人の世の常ですが――
実は――
人の気持ちがわからないことにも長所はあるのです――
声高に主張されることは、ほとんどありませんが――
……
……
人の気持ちがわからないことの長所とは何か――
それは――
人を変える力です。
人の気持ちがわからない人は――
人の行動を劇的に変えうる可能性を秘めています。
……
……
人は――
基本的には自分の気持ちに沿って動きます。
ここでいう「気持ち」とは、単に、
――○○したい。
といった単純なものばかりではなく、
――本当は○○したいけれど、今は□□するべきと思うから、少しだけ△△してみる。
というような複雑なものもあるのですが――
いずれにせよ――
そうした“気持ち”が人の行いを実際的に定めていることは――
おそらく間違いありません。
――自分の気持ちに反して動いている人を私は知らない。
と極言する人もいるくらいです。
……
……
人の気持ちがわかる人というのは――
人の気持ちに反する行いをその人に求めることが、決してできない人です。
その結果――
人を変えられない――
その人が自分の気持ちに沿って動くのをただ追認するだけ――
これでは――
その人の行動は何も変わらないのですね。
これに対し――
人の気持ちがわからない人は――
そんなことはお構いなしです。
どんどん、人の気持ちに反する行いを求めていきます。
その結果――
人を変えられる――劇的に変えられるのです。
人は――
自分の気持ちに反する行いを繰り返し求められ、繰り返し行っていくうちに――
しだいに、自分の気持ち自体が変わっていってしまうのですね。
もちろん――
良い方に変わる保証はなくて――
悪い方に変わったり――
あるいは――
良い方に変わりはしたけれど、深い怨恨を伴ってしまったりすることは、よくあるのですが――
何はともあれ――
人の気持ちがわからない人は――
人を変えられる――
人を劇的に変えうるのです。
この可能性が――
人の気持ちがわからない人の、ほとんど唯一の長所といえます。
……
……
人が、ヒトという生物種として、この世界で生き残っていくためには――
自分たち自身が変わっていかなければなりません。
世界という生活の環境に適応し続けていかなければならない――
世界は常に変化し続けています。
いかなる生物種にとっても――
変わることこそが、進化の本態であり、自然淘汰の前提なのです。
人の気持ちがわからない人は――
少なくともヒトという生物種については――
進化の本態を促進し、自然淘汰の前提を保証する存在といえます。