――もう、そんなことまでわかるの?
と――
まだ小学生だった頃に――
大人を驚かせたことがあります。
実際には――
何もわかっていませんでした。
テレビで見聞きした言葉を、ただ何となく状況に合わせて口にしたら――
それが、あまりにも文脈に合致していたらしく、大人が目を見開いた――
というのが真相です。
が――
大人は、そうは捉えないのですね。
子ども自身が、自分なりに状況を理解し、思考し、表現したものと誤解しやすい――
……
……
すでに故人となった有名な学者さんが――
電車の中で話し込む幼い姉弟と居合わせ――
弟は、自分の喧嘩のこと姉に話し――
姉は、弟の訴えを最後まで黙って聞いた上で、
――本当のことをあまりいうものではない。
といった意味の言葉で諭したので――
腰を抜かした――
という話を――
きのうの新聞で読んだのですが――
このエピソードも――
おそらくは、大人の誤解です。
……
……
仮に――
その姉が、本当に自分なりに状況を理解し、思考し、表現しようとしたのであれば――
たぶん――
もう少し違った言葉を口にしていたでしょう。
大人であろうと、子どもであろうと――
自分なりに「本当のことをあまりいうものではない」との言葉を捻りだし、使いこなせる思慮や分別があるならば――
この言葉を――
少なくとも電車の中では――
なかなか口にする気には、ならないはずです。