知勇を兼ね備えた将を、
――良将
と呼ぶ、と――
きのうの『道草日記』で述べましたが――
では、
――悪将
とは――
どんな将のことでしょうか。
……
……
もちろん――
知も勇も備えていない将を「悪将」といってもよいのかもしれませんが――
僕は、そういう将は、どちらかというと、
――凡将(ぼんしょう)
とか、
――愚将(ぐしょう)
と呼ぶのがよいのではないかと考えています。
「悪将」というのは、
――過ぎたるは及ばざるがごとし。
の発想で定義するのが、よいのではないでしょうか。
すなわち――
「悪将」には2種類あります。
――謀将(ぼうしょう)
および、
――猛将
です。
知将の“知”が過ぎて、他者を騙してばかりいて、信が立っていないような将を「謀将」――
勇将の“勇”が過ぎて、周囲がみえず、猪突猛進を繰り返しているような将を「猛将」――
と、僕は呼びます。
謀将も猛将も、決して愚将ではありません。
むしろ――
しかるべき活躍の場を与えれば、存分に能力を発揮します。
その点で、謀将も猛将も、凡将とは決定的に異なるのですが、
――起用の仕方を間違えると、大変なことになる。
という意味では――
たしかに「悪将」なのです。
まさに、「過ぎたるは及ばざるがごとし」でして――
例えば――
謀将が、敵だけでなく味方の猜疑をもつのらせた結果、人の和を乱したり――
猛将が、蛮勇を振るって攻撃を仕掛けた結果、天の時や地の利を逸したり――
ということが、しばしば起こります。
……
……
きのうの『道草日記』で――
僕は、
――名将は、自ら良将であろうとすることはなく、知将や勇将の心を掌握し、存分に働かせる。
というようなことを述べましたが――
それだけが名将の条件ではありません。
――名称は悪将をも使いこなす。
という点も――
非常に大切です。
すなわち――
名将は、謀将や猛将などの「悪将」に、しかるべき活躍の場を与えはするが――
決して重く用いすぎることはないのです。