会社のトップは10年~30年は変わらないのがよく――
国家のトップは3年~10年で変わるのがよい――
そう思っています。
その理由は2つあって――
1つは――
公的な権力の有無です。
国家のトップは、公的な権力を握り――
会社のトップは、私的な権限は握るが、公的な権力は握らない、ということです。
いわゆる権力は――
それを長く握る者を腐敗させます。
国家のトップが握る公的な権力なら、なおさらです。
よく指摘される危険性ですね。
もう1つの理由は――
経験の積み方や評価の受け方の違いです。
トップに求められる経験の量や評価の質が――
国家と会社とでは大きく異なる、ということです。
会社も国家も――
組織であることに変わりはありません。
どんな組織にも――
組織運用のための基本方針というものがあります。
組織が生き残るためには――
その基本方針を、組織の内外の状況にあわせて、1年~3年くらいで見直す必要があります。
1年~3年くらいで見直す、ということは――
3年~10年では、少なくとも1回~3回くらいは見直す、ということです。
また――
10年~30年では、少なくとも3回~10回くらいは見直す、ということです。
組織のトップが、組織運用の基本方針を、3回~10回くらい見直すことは――
経験としては十分です。
きっと本質的なことを多く学べるでしょう。
この経験の充足は、少なくとも会社のトップにとっては、大変に有益です。
経験の豊かな企業家が長らくトップを務める会社は――
容易なことでは行き詰らないでしょう。
ただし――
基本方針を同一人物が3回~10回も見直していたら、
――場当たり的である。
とか、
――節操がない。
とかの非難は免れません。
こうした非難は、企業家はともかく、政治家には致命的に不利といえます。
一方――
組織のトップが、組織運用の基本方針を1回~3回くらい見直したくらいでは――
経験としては不十分です。
おそらく本質的なことは何も学べないでしょう。
この経験の不足は、会社のトップには致命的に不利です。
経験に乏しい企業家が、代わる代わるにトップを務める会社は――
容易に行き詰るでしょう。
ただし――
たとえ基本方針であっても、1回~3回くらい見直したくらいでは、「場当たり的である」とか「節操がない」とかまではいわれにくい――
むしろ、
――柔軟だ。
とか、
――物事を理性的に進めている。
とかと称讃されます。
こうした称讃は、企業家はともかく、政治家には決定的に有利といえます。
以上、2つの理由により――
会社のトップは10年~30年は変わらないのがよく――
国家のトップは3年~10年で変わるのがよい――
と、僕は考えています。
このことは――
国家のトップが会社のトップに就いたり――
会社のトップが国家のトップに就いたりする場合には――
本人はもちろん、周囲の人たちも――
十分に勘案する必要があるでしょう。