――戦争は、始めるのは簡単で、終わらせるのは難しい。
といわれます。
(そうだろうな)
と思います。
……
……
――本当にそうだろうか。
と訝られる方は――
「戦争」を「喧嘩」に置き換えてみると、いくらかわかりやすいでしょう。
国家間で起こるのが戦争であり――
個人間で起こるのが喧嘩である、とみなします。
……
……
喧嘩は、理性のタガが外れて起こりますね。
――しょせん喧嘩は無益である。
と――
皆、理性ではわかっています。
ところが――
いったん喧嘩が起こってしまったら――
その後――
理性のタガが戻っても、
――向こうが喧嘩をやめなければ、こちらも絶対にやめられない。
と思ってしまいます。
実際に、そうです。
いったん喧嘩が起こってしまったら――
必ず感情のしこりが生まれます。
それは理性を超えたところにあり――
その超越性は、理性によって、よく知られているところです――経験的にも、よく知られている――
そうやって、お互いに「向こうが喧嘩をやめなければ……」と思うので――
喧嘩は、なかなか終わらないのですね。
理性のタガが外れて喧嘩は起こり――
そのうちに、何となく理性のタガは戻るけれども――
今度は、そのタガによって、じわじわと締められて――
喧嘩は、より一層、続きやすくなってしまうのです。
なので――
喧嘩は、始めないに越したことはない――
……
……
戦争も同じです。