――戦争は時に国家指導者が抱く不安や憤怒によって起こる。
ということを、きのうの『道草日記』で述べました。
このことは――
よく考えてみると――
とても恐ろしいことです。
――国家指導者
といっても――
具体的には、一人の人間です。
性格に歪みがあり、能力に限りがある――
全知全能からは程遠い存在です。
一人の人間の心理の移ろいは、少なくとも統計的には、予測が不可能です。
そんな揺らぎのような現象――心理的な現象――によって――
戦争が起こったり、起こらなかったりする――
何とも過酷な現実であると思います。
要するに――
戦争は時に統計的に全く予測がつかない形で勃発をする――
ということです。
もう少し、わかりやすくいうと――
――えぇ? なんで今なの?
というタイミングで戦争は起こりうる――
ということです。
……
……
先週の木曜日に始まったウクライナ対ロシアの戦争は――
ロシア政府は「戦争」とは認めていないようですが――
その戦争は、まさに、
――えぇ? なんで今なの?
というタイミングで起こりました。
多くの識者が、
――まさかロシア政府がウクライナに侵攻をするとは思わなかった。
と口を揃えています。
その理由は、
――現時点で、ロシア政府がウクライナに侵攻をしても、得るものは小さく、失いうるものが大きいのは明らかだから――
です。
つまり――
ロシア政府の首脳部は、今回の侵攻を――
ロシア政府は「侵攻」ではなく、「特別軍事作戦」と呼んでいるようですが――
その今回の侵攻を、
――煩悩
つまり、
――政治
に基づいて決めたのではなく――
国家指導者の個人的な感情、
――不安
ないし、
――憤怒
に突き動かされて決めたのではないか――
ということです。
こうした側面を決して見過ごせないのが――
いわゆる、
――戦争
なのですね。
ここでいう、
――戦争
とは、
――国家指導者の誰かによって引き起こされる国家間戦争
あるいは、
――21世紀以降、もはや本格的には起こらないであろうと思われていた国家間戦争
です。