――人は、戦争に厭(あ)いて平和を求め、平和を恃(たの)んで戦争を始める。
という考え方があります。
戦争は、しょせん人と人との殺し合いですから――
ふつうの感覚では、絶対に望まれえないことです。
よって――
不幸にして、いったん戦争が始まってしまった結果――
戦争がどういうことなのか、よくわかったら――
人は――
恐怖と悔恨とに苛まれ、平和を求めます。
ところが――
幸いにも、平和が長く続いてしまった結果――
戦争がどういうことなのか、よくわからなくなったら――
人は――
些細な行き違いから、戦争を始めます。
例えば――
しばらく平和を満喫していると、
――これくらいのことをしても、きっと戦争にはならないでしょ。
と高をくくってしまい――
その結果、どこか外国の政権や国民の感情を酷く害するようなことに手を出してしまい――
思いがけず戦争をしかけられる――
とか――
あるいは、
――これは正当防衛の範囲内であって、決して侵略ではない。
と宣言して行ったことが――
どこか外国の政権や国民に誤解ないし曲解され、「侵略である」とみなされてしまい――
満を持して戦争をしかけられる――
とか――
……
……
要するに、
――平和が長く続くと、人は平和を過信するようになり、ひいては戦争を起こしやすくなる。
ということです。
……
……
もちろん――
戦争を過信し、
――戦争は外交の一環である。政策としての戦争をもっと積極的に活用しよう。
と訴えるのは、もちろん愚かなことですが――
平和を過信するのも――
それと同じくらいに愚かなことかもしれません。