非常に奇妙で狂っているとしか思えない考えであっても――
その考えの筋を、理屈に従って、順次、辿っていくと、
――そんなに狂ってはいないな。
と感じられることが――
多々あります。
では――
なぜ、その考えが奇妙で狂っていると思えたのか――
実は――
その考えの筋の出発点が、奇妙で狂っているのですね。
――え? そんなことを前提に、物事を考えていたわけ?
と――
思考は――
事実を前提に論理を組み立てていく営みです。
論理は――
いったん学んでしまえば――
そんなに間違えるものではありません。
間違えやすいのは――
事実のほうです。
何を事実と認識するか――
……
……
例えば――
隣国の軍隊が大規模な軍事演習を行っているのをみて、
――大丈夫、いつものことだから……。
と笑うか、
――いよいよ戦争が始まるかもしれない!
と慄くか――
どちらの考えも――
理屈に従った当然の筋を辿っています。
違うのは――
前提となる事実の認識です。
――戦争を真に望む者など誰もいない。
と認識するか、
――たまに戦争を心から望む者がいる。
と認識するか――
あるいは、
――戦争は国家権力が計画的に起こす。
と認識するか、
――戦争は、しばしば前線で偶発的に起こる。
と認識するか――
それら一つひとつの認識の中身を突きつめずに、
――お気楽な考えにすぎる。
とか、
――ひどくナイーブな考えだ。
とかと愚弄をするのは無益なことです。