マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

政治に奇策は向かない

 いわゆる有識者と呼ばれる人たちの中には――
 政治の世界に対し、ときどき、

 ――奇策

 を提案する人がいます。

 アイディアとしては面白く、
(巧いこと考えるな~)
 と感心させられることが少なくないのですが――

 同時に、
(よりによって政治の世界に提案しなくても~)
 と落胆することも少なくありません。

(そんなことしても意味ないんだけどな~)
 と――

 ……

 ……

 政治に奇策は――
 向かないのです。

 とくに民主主義の政治には――
 まったく向きません。

 なぜか――

 民主主義の政治では――
 あらゆる政策の決定に、社会の多数派の同調や共感が必要であるからです。

 当然、奇策の決定にも、それらは必要です。

 奇策は、いったん成功してしまえば、同調や共感は得られやすいのですが――
 成功するまでは、必ずといってよいほどに敬遠されたり嫌悪されたりします。

 社会の多数派の同調や共感を得るのは、

 ――まずムリ

 といってよいでしょう。

 一方――

 ……

 ……

 ビジネスやサイエンスの世界、あるいは、スポーツやアートの世界では――
 奇策が向いているのですね。

 むしろ――
 それら世界では、斬新な奇策が常に渇望されているといってもよいでしょう――奇策が決定され、実行に移され、著効し、画期的な成果をあげることが、強く期待されている――

 なぜか――

 ビジネスやサイエンスの世界、あるいは、スポーツやアートの世界では――
 奇策を決定に際し、社会の多数派からの同調や共感が得られなくても、まったく困らないからです。

 周囲の協力者たちからの同調や共感が得られれば――
 それで十分なのですね。

 政治の世界――とりわけ民主主義の政治の世界――とは、根本的に異なります。

 ……

 ……

 ときどき――
 ビジネスやサイエンスの世界、あるいは、スポーツやアートの世界で目指しい業績をあげた人が、華々しく政界へ転身して、その後、鳴かず飛ばずになりますが――

 そういう人は――
 おそらく、奇策で業績をあげることが得意な人です。

 ……

 ……

 そういう人は――
 決して政界へは転身しないのがよいでしょう。

 転身しても、息苦しいだけです。