安倍晋三さんのご逝去を――
日本各地で数多くの方々が悼んでいます。
悼むだけではなくて――
多くの方々が、悲しみ、落ち込み、怒っている――
……
……
何を隠そう――
僕自身も、悲しみ、落ち込み、怒りました。
僕は、安倍晋三さんの政治信条に決して共感ができたわけではありません。
部分的には、
(それは、わかる)
とか、
(たしかに、その通り――)
と思えることはありましたが――
全体的には、
(何となく遠くにいらっしゃる方――ほかの世界に住んでいらっしゃる方――)
という印象でした。
そんな僕でも――
安倍晋三さんのご逝去の知らせによって――
ぽっかりと大きな穴が心にあきました。
それが自分でも不思議であったのですが――
やはり――
根底にあったのは、政権首班が短期で変わりやすい日本の民主主義政治の現場にあって――
通算 10 年近く内閣総理大臣を務め続けられたことに対する素朴な敬意です。
かなり共感をしにくい政治信条の内閣総理大臣であっても――
民主主義政治の現場にあって、10 年近く内閣総理大臣を務め続けられれば、それだけで十分に尊崇の念を覚えます。
そして――
これは当たり前のことではあるのですが――
今年の2月にロシア政府がウクライナへ侵略を始めたときに、
――既存の国際秩序を武力で脅かすことは許されない。
と報道陣の前で明言をされたことです。
それまでのロシア政府の最高指導者との交流の経緯を考えたら――
この明言は非常にされにくかったはずです。
が、明言をされた――
当たり前のことなのですけれど――
その当たり前のことを当たり前に行うことが非常に難しいと思うのです。
実際――
あの時――そして、今も――ウクライナでは大勢の人たちが殺し、殺されていて――
その報道に、日本人の多くが動揺をしてきたわけですから――
……
……
このご発言で――
安倍晋三さんは、日本人の最大公約数的な信頼を勝ち取られたように思います。
少なくとも僕は――
ロシア政府によるウクライナ侵略に関し、安倍晋三さんのご見解は信頼に値をすると感じました。
それが、ほんの5か月ほど前のことです。
それゆえに――
安倍晋三さんのご逝去の知らせは、あまりにも衝撃が強すぎた――
こんなことが、あってよいはずがない――
……
……
僕自身の悲しみや落ち込みや怒りを端的にいえば――
これです。
――こんなことが、あってよいはずがない。