いわゆる核兵器の抑止力は、
――攻撃は最大の防御である。
の原理に依っていると考えられます。
この抑止力が――
20世紀中頃からの核兵器の開発競争によって、偶発的かつ不可避的に確立された概念であり――
それなりの実効性を備えていそうな概念であることを――
僕は認めます。
が――
防御のために圧倒的な攻撃力をもつという発想――つまり、瞬時のうちに何十万もの人々を殺傷しうる攻撃力をもつという発想――は、どこか歪んでいるといわざるを得ません。
以上のことを――
僕は、何か理念的に高尚な意味でいっているのではありません。
あるいは――
論理的に複雑な意味でいっているのでもありません。
――なんか、おかしくない?
という極めて素朴かつ単純な意味でいっています。
……
……
(核兵器の抑止力よりも、もっとわかりやすい抑止力を確立できないものか)
と思います。
例えば――
核兵器の攻撃力が圧倒的であるように――
圧倒的な防御力をもつ防御兵器というものを開発できないか、と――
いいかえるなら、
と思わせる抑止力ではなくて、
――核兵器で攻撃しても、完璧に防御されるだけだから、止めておこう。
と思わせる抑止力を確立できないか――
ということです。
……
……
圧倒的な攻撃力のある核兵器さえも無力化してしまうような圧倒的な防御力――
そんな防御兵器が開発されれば――
世界は、ずいぶん変わってくると思います。
それを、
――夢の兵器
と呼んでも――
たぶん、おかしくはないでしょう。
が――
……
……
原理的には――
難しいでしょうね。
少なくとも、
――攻撃は最大の防御である。
の命題が原理とみなされているうちは――
かなり難しいでしょう。