――戦争への恐怖とは、死への恐怖のことである。
という人がいるのですが――
僕は、
(違う)
と思っています。
そもそも――
死は、誰にとっても未知の体験であり、未知の事象です。
そんなことに恐怖を抱くなど、原理的に不可能です。
恐怖の感情は、あくまでも対象が明瞭に意識されるときにのみ、生じますので――
では――
戦争への恐怖とは何か――
……
……
僕は、
――殺される恐怖
であると思っています。
正確には、
――誰かに殺されていく過程への恐怖
です。
場合によっては、
――殺す恐怖
――誰かを殺していく過程への恐怖
という人もあるでしょう。
殺される過程も殺す過程も――
死よりは体験しやすい事象です。
想像もしやすい――
それゆえに――
対象が明瞭である――
少なくとも、死よりは明瞭に意識しやすい――
よって――
恐怖も抱きやすい――
そういうことであろうと思います。