――地球上には統一政府が存在しない。
という事実を――
国際政治学や国際関係論では、基本事項の一つとするそうです。
たしかに――
この地球上には統一政府が存在しませんよね。
国際連合は統一政府らしき組織を連想させはしますが――
実態としては、統一政府には程遠い組織です。
統一政府が存在しないという意味で――
現代の地球上は、さながら戦国時代の中国大陸や日本列島と同じ状況にあると、いえます。
中国大陸の戦国時代も日本列島の戦国時代も――
それらの終結に不可欠であった概念ないし思想は、
――天下
であった、と――
考えられます。
――あの空をみよ! 我々は天の下に皆、等しく生きているではないか!
という素朴な実感です。
この実感が、おしなべて共有されるのに十分なくらい、日本列島はもちろん中国大陸も、
――狭かった。
ということです。
が――
地球上は、どうでしょうか。
現代に至るまで、地球上に統一政府が存在しないという事実を踏まえると――
地球上は「天下」の実感を共有するには、ちょっと広すぎるかもしれません。
いや――
――広すぎる
ではなくて――
たぶん、
――丸すぎる
のです。
……
……
落ち着いて考えてみると――
例えば――
北半球と南半球とでは――
みあげる空は違います。
ユーラシア大陸とアメリカ大陸とでも――
違います。
あるいは――
同じユーラシア大陸であっても――
西と東とでは違いますし――
北と南とでも違います。
つまり、
――地球上は「天下」と呼ぶには丸すぎる。
のです。
もちろん――
この命題には隠喩の意味も含まれます。
具体的には――
この地球上での各所の地域性は――
一つの素朴な実感を共有するのが難しいくらい、互いに隔絶されているのかもしれない――
ということです。