詞や随筆を朗読するときに――
自分が朗読しやすいように、つい原文を弄ってしまう癖が――
僕にはあります。
もちろん――
人前で朗読するときには――そんなことは滅多にありませんけれど――寸分たがわずに朗読しますよ。
が――
そうでないときは――
適当に字句を入れ替えて朗読してしまうのですね。
これは――
下手な作品を朗読するときだけの話ではありません。
かなり高名な方――芸達者と呼ばれている方――の作品を朗読するときでも――
読みやすいように適当に字句を入れ替えるのですね。
不遜の極みです。
……
……
文章のリズムというのは、
――個人に固有である。
と――
僕は思っています。
ある人にとっては最適のリズムであっても――
別の誰かにとっては、
――最適からは程遠い。
ということが――
しばしば起こりうる、と――
僕は思っています。
10代の僕は――
そうは思っていませんでした。
誰にとっても、
――最適のリズム
というものがあるに違いない、と――
信じて疑いませんでした。
……
……
詞や随筆を朗読するときには――そんなことは滅多にないと思いますけれど――この、
――文章のリズムの主観性
というものを――
十分に意識しておくのがよいでしょう。