物語で――
主役が際立つには――
相手役も際立つ必要があります。
相手役がパッとしないのに、主役だけが際立つということは――
ふつうは、ありえません。
きのうの『道草日記』で触れたクラリス・バルカの物語も同じです。
クラリス・バルカが主人公として十分に活躍するためには――
クラリス・バルカの相手役も、また十分に活躍する必要があるのです。
その意味で――
大スキピオ改のような登場人物が――
クラリス・バルカの物語には欠かせません。
大スキピオ改は――
何といっても、ザマ(それとよく似た地)で、主人公クラリス・バルカの軍を破るわけですから――
相手役としては、まったく申し分のない存在感です。
しかも――
――背筋に滝の汗を流すほどの恐怖の対象
でありながら、
――親しく語り合ってみたいと感じられる異性
でもあり、
――その体を八つ裂きにしても飽き足らぬ!
と、強烈な憎しみを覚える反面、
――あんな戦い方を自分もしてみたい。
と、純朴な憧れも覚えてしまう――
そうした大スキピオ改の心情を丁寧に描くことで――
クラリス・バルカの存在感は、否が応でも、高まっていくでしょう。
ただし――
……
……
クラリス・バルカの物語は――
ハンニバル・バルカの物語と同様に――
一般受けはしにくいでしょう。
主人公が最後に勝利を収める物語――つまり、ハッピーエンド――ではないからです。
一般受けのする物語というのは――
基本的には――
ハッピーエンドなのですね。
……
……
僕自身は――
一般受けのしない物語が好きなので――
クラリス・バルカの物語も好きなのですが――
もし――
この物語を一般受けさせようと思ったら――
ちょっと頭を使わないといけません。
その話は――
また、あすに――