もう何年も会っていない友人夫婦を――
なぜか急に訪ねることになりまして――
その夫婦が勤めているはずの建物へ向かいました。
玄関から入り――
エスカレータを昇り切ったところで――
廊下の向こう側から――
その夫婦が仲良く腕を組んで歩いてくるのを見かけたので、
――おお、奇遇だな!
と、声をかけそうになったのですが――
よくみると――
面影が似ているだけで――
その夫婦とは明らかに別人の男女二人組であることが――
わかりました。
その夫婦と僕とは同じ年代――つまり、今、40代であるのに――
廊下の向こう側から歩いてきた男女二人組は――
まだ10代後半の容貌をしていました。
男のほうは、夫のほうに似ていて――
女のほうは、妻のほうに似ていました。
なので――
とっさに僕は、
(なんだ、あの夫婦、双子の子どもがいたのか)
と察しました。
もちろん――
性別が違うので――
一卵性ではなく、二卵性の双生児ですね。
その男女二人組は仲良く腕を組んだまま――
僕の昇ってきたエスカレータとは別の方向へ、去っていきました。
僕と視線が合うことは、
(絶対にない)
と、わかっていました。
僕は、その夫婦に子どもがいることさえ、知らなかったわけで――
その二人組が僕の急な訪問に気づくわけはなく――
そもそも、僕の顔を知っているわけがありませんでした。
……
……
何のことやら、さっぱり――
と思われる向きが多いかと思います。
……
……
それも、そのはず――
以上は――
僕がみた夢の話です。
男女二人組が去っていったところで――
目が覚めました。
……
……
目が覚めた後――
なぜか――
不思議と元気になりました。
なぜでしょう。
自分では、よくわかりません。
……
……
ちなみに――
夢に登場した友人夫婦は実在します。
実際に――
もう何年も会っていません。
そして――
彼と彼女との間に子どもがいるのかどうかを――
僕は知りません。
手紙や電話のやりとりだけで――
はや20年くらいが経っています。