恋の歌は、
――恋の成就する歌
と、
――恋の破綻する歌
との2種類に分けられます。
ここでいう「恋の成就」とは
――自分の恋愛感情が相手に受け入れられること
で、「恋の破綻」とは、
――自分の恋愛感情が相手に拒まれること
です。
いわゆる片想いの歌は――
一見これら2種類のどちらにも含まれないようですが――
その歌の中で――
恋の成就が希望的に暗示されているのなら、“恋の成就する歌”といってよく――
恋の破綻が絶望的に暗示されているのなら、“恋の破綻する歌”といってよいでしょう。
……
……
これら2種類の歌のうち――
圧倒的に多いのは――
何といっても、
――恋の破綻する歌
です。
なぜか――
……
……
おそらくは――
聴き手が感情移入をしやすいからですね。
恋の破綻する歌では――
恋が破綻しているので、歌の主人公は、ただ一人で聴き手に向かい合うことになります。
が――
恋の成就する歌では、「一人」というわけにはいきません――成就する恋の相手も、少なからず、聴き手に向かい合ってきます。
聴き手にとっては――
歌の主人公が、ただ一人で向かい合ってくれるほうが、どこの誰とも知れぬ「恋の相手」も一緒になって向かい合ってくるよりも、はるかに感情移入がしやすいのです。
よって――
恋の歌は、圧倒的に“恋の破綻する歌”――つまり、失恋の歌――に偏ることになります。
つまり、
――“恋の歌”ならば“失恋の歌”
と考えて――
差し支えないでしょう。