いわゆる『花木蘭伝説』について――
僕が気になっていることの一つに、
――花木蘭は美人であったのか。
があります。
もちろん――
この伝説が演劇や映画やTVドラマの物語になる場合には――
当然ながら、花木蘭の役は主演女優が演じるわけですから――
美人に決まっていますが――
そうではなくて――
……
……
純粋に物語の設定として――
花木蘭は美人であったのか――美人である必然性はあったのか――ということです。
……
……
僕は、
(たぶん美人ではなかった)
と思っています。
根拠は――
伝説の終盤に、
――従軍中に知り合った男の戦友たちは、誰一人、花木蘭を女性とは気づかなかった。
というくだりがあるからです。
男の戦友たちは――
花木蘭に連れられて、花木蘭の郷里に入り、花木蘭が男装を解くまで――
花木蘭を男だと信じて疑わなかった、と――
伝説は伝えます。
……
……
美人であれば――
気づくでしょう――よほど鈍感な男であったとしても――
……
……
この、
――花木蘭の性別に誰もが気づかなかった。
という設定も――
『花木蘭伝説』を魅力の根源になっていると考えられます。
つまり――
花木蘭が、自分の性別を隠し、男たちに混じって戦っているという秘密を――
物語の受け手は、花木蘭と分け合っているのですよね。
ここにも――
一対一構造が見え隠れしているのです。