マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

『花木蘭伝説』あれこれ(1)

 いわゆる『花木蘭伝説』について――
 僕が気になっていることの一つに、

 ――花木蘭は美人であったのか。

 があります。

 もちろん――
 この伝説が演劇や映画やTVドラマの物語になる場合には――
 当然ながら、花木蘭の役は主演女優が演じるわけですから――
 美人に決まっていますが――

 そうではなくて――

 ……

 ……

 純粋に物語の設定として――
 花木蘭は美人であったのか――美人である必然性はあったのか――ということです。

 ……

 ……

 僕は、
(たぶん美人ではなかった)
 と思っています。

 根拠は――
 伝説の終盤に、

 ――従軍中に知り合った男の戦友たちは、誰一人、花木蘭を女性とは気づかなかった。

 というくだりがあるからです。

 男の戦友たちは――
 花木蘭に連れられて、花木蘭の郷里に入り、花木蘭が男装を解くまで――
 花木蘭を男だと信じて疑わなかった、と――
 伝説は伝えます。

 ……

 ……

 美人であれば――

 気づくでしょう――よほど鈍感な男であったとしても――

 ……

 ……

 この、

 ――花木蘭の性別に誰もが気づかなかった。

 という設定も――
 『花木蘭伝説』を魅力の根源になっていると考えられます。

 つまり――
 花木蘭が、自分の性別を隠し、男たちに混じって戦っているという秘密を――
 物語の受け手は、花木蘭と分け合っているのですよね。

 ここにも――
 一対一構造が見え隠れしているのです。