『花木蘭伝説』の主人公・花木蘭は、
――おそらくは美人ではなかった。
ということを――
きのうの『道草日記』で述べました。
物語の設定上、
――美人ではなかった。
と考えるほうが自然である――
ということです。
この「美人ではなかった」という点が、『花木蘭伝説』に物語としての普遍的な魅力をもたらしている、と――
僕は考えています。
正確には、
――もし美人であったなら、普遍的な魅力はもたらされなかったであろう。
ということです。
もちろん――
もし美人であったなら、いわゆる戦闘美女偶像の愛好家には強烈な魅力をもたらすに違いありません。
が――
それ以外の人たちには――
そっぽを向かれるでしょう。
――男の欲望にとって、あまりにも都合の良すぎるキャラクター造形だ。
と興醒めされるはずなのです。
花木蘭は――
おそらくは――
男装の良く似合う女性――「良く似合う」というよりも、男装に全く違和感を覚えさせない女性――
心身ともに男所帯に溶け込める女性――男だらけの共同体の中で女性性を見事なまでに消せる女性――
そんな女性であったに違いないのです。