夫婦関係を一般論として扱っても、夫婦のことは、よくわからないが――
男女関係を一般論として扱えば、夫婦のことも、よくわかる――
というようなことを――
きのうの『道草日記』で述べました。
では、
――男女関係を一般論として扱えば、夫婦のことも、よくわかる。
とは――
具体的に、どういうことでしょうか。
……
……
簡単にいってしまうと、
――男女関係という視点でみれば、夫婦関係が破綻している夫婦のことも、よくわかる。
ということです。
例えば――
浮気を繰り返す夫を黙って許し続ける妻という夫婦の場合は――
夫婦関係は破綻していますが――
男女関係は曲がりなりにも維持されているわけです。
夫は、すでに夫であることをやめ、男であることに徹している一方で――
妻は、妻であることに徹することで、何とか女としての矜持を保っているといえます。
あるいは――
夫婦として社交の場に出るのを妻が拒んでいる夫婦の場合は――
夫婦関係は表向きは継続されていますが、実は破綻寸前かもしれなくて――
その背景にあるのは男女関係の終局です。
妻は、夫である男に対し、女としての関心を失っている一方で――
夫は、妻である女に対し、男としての関心を保っている可能性が窺えるのですね。
これら2つの事例を、夫婦関係だけに着眼して評価していたら――
たぶん、実態を見失うでしょう。
着眼すべきは男女関係――とくに、その安定性ないし健全性――です。
例えば――
浮気を繰り返す夫を黙って許し続ける妻という夫婦の場合は――
男女関係は不安定ではありませんが、不健全です。
おそらくは――
妻に持続している女としての恋愛感情が、男女関係を強引に維持させていて――
夫による男としての勝手気儘な行動が、一切なかったことにされています。
この実態を、夫婦関係だけに着眼して評価すると、
――夫婦関係は破綻しているのに、なぜか強固に維持されている。
との矛盾に突き当たります。
また――
夫婦として社交の場に出るのを妻が拒んでいる夫婦の場合は――
男女関係は不安定ですが、不健全ではありません。
おそらくは――
妻に持続していた女としての恋愛感情は、もはや完全に消失してしまっていて――
夫に持続している男としての恋愛感情が、男女関係を辛うじて維持させているにすぎません。
この実態を、夫婦関係だけに着眼して評価すると、
――夫婦関係は、外面的にはともかく、内面的には安定的に維持されている。
との誤解に陥ります。
……
……
以上の議論で前提となっているのは――
男女関係の一般化です。
男女関係は、夫婦関係とは違って、比較的容易に一般化できるのですね。
すなわち――
男女関係とは、
――男女双方ないし片方の恋愛感情によって構築され、その感情の持続ないし記憶によって維持される関係
です。
こうして一般化される男女関係の具体例で構成される集合の一部が、
――夫婦関係
です。