マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

どんなに奇異な夫婦関係も

 どんなに奇異な夫婦関係も――
 男女関係に着眼してみれば、それなりに理解できるものです。

 例えば――
 次のような事例――

 ……

 ……

 10代半ばの女の子が、

 ――うちのお父さんとお母さんは、同じ家に暮らしてますけど、お互い全く口をききません。

 といっています。

 女の子は一人っ子です。

 ご両親の生活の様子を詳しく訊くと、

 ――寝室は別々で、ご飯も別々――もちろん、一緒に出かけたりもしません。はっきりいって夫婦関係は終わってると思います。

 とのこと――

 ――私は、離婚したほうがいいと思うんですけど、お祖母さんに相談したら、、「『子は夫婦の鎹(かすがい)』っていうからね」といわれました。私のことが気になって、離婚できないみたいです。

「そのことを、あなた自身は、どう思っているの?」
 と訊くと、

 ――私は、こんなの、イヤです。早く離婚してほしい。お父さんもお母さんも、こんな不自然な生活は早くやめて、それぞれの道を進んでほしいと思います。

 といいます。

 なかなかに早熟の女の子ですが――
 たまに、こういう意見をしっかりといえる女の子が10代にもいます。

 けっこうなことです。

 ……

 ……

 で――

 この女の子に何といってあげるか――

 ……

 ……

 僕なら――
 こういいます。

 ――たしかに、夫婦関係としては、メチャクチャ不自然だけれど、男女関係としては、そこまで不自然ではないですよ。

 と――

 ……

 ……

 この女の子のご両親は――
 夫婦関係は破綻していますが――
 男女関係は不健全ながらも維持されているのです。

 おそらく――
 父親か母親か、どちらかに強い恋愛感情の記憶があって――
 それが、男女関係を辛うじて繋ぎ止めているのですね。

 もちろん――
 どちらの恋愛感情かは微妙なところですが――
 経験的には、母親のほう――つまり、妻である女のほう――の恋愛感情の記憶であることが多くあります。

 もし、夫である男のほうの恋愛感情であれば――
 たいていの場合――
 妻である女のほうが、さっさと男の感情を振り切って、とっくの昔に子を連れて家を出ているはずです。

 そうはなっていないということは――
 たぶん、妻である女のほうに過去の強烈な恋愛感情の記憶があって――
 夫である男のほうも、そのことは何となく覚えていて、意識的にか無意識的にかはともかく、そのことを何となく受け入れている――

 だから――
 2人の男女関係は不健全ながらも維持されているのであろうと思います。

 ……

 ……

 たしかに、

 ――子は夫婦の鎹

 とはいいますが――
 それは口実でしょう。

 実際に“鎹”となっているのは、

 ――過去の強烈な恋愛感情の痕跡

 であることが、ほとんどです。