――恋は、心の作用ではなく、体の反応である。
ということを――
この『道草日記』で繰り返し述べておりますが――
このことの真意は、
恋 ≒ 生殖欲求
の図式を踏まえると――
わりと具体的に、わかってきます。
……
……
まず――
指摘しておきたいことは――
生物種には――
ヒトも含めて――
2つの本能的欲求があると考えられる――
ということです。
1つは、摂食欲求――つまり、食欲――です。
これがないと――
生物種は個体を維持できません。
もう1つが、生殖欲求――つまり、性欲――です。
これがないと――
生物種は種族を維持できません。
摂食も生殖も、
――心
ではなく、
――体
と密接に関連している行動です。
体にエネルギーが流れることで、体は生き続け――
体に遺伝情報が伝わることで、体は受け継がれます。
もとより――
摂食は、食物のエネルギーが体の中に入るのに不可欠で――
生殖は、体の遺伝情報が親から子へ伝わるのに不可欠です。
よって、
恋 ≒ 生殖欲求
の図式が真に意味するところは――
恋は、ヒトの個体に関わることではなく、種族としてのヒトに関わることであり――
個体と個体との間で起こる「遺伝情報の伝播」という名の相互作用であるということ――
また――
その相互作用は――
個人の心一つをみていたのでは、どうにも感知できず、もちろん、制御もできず――
種族の体の一つひとつをみて初めて、どうにか感知でき、もしかしたら、制御もできるのかもしれないことである――
というものです。
そういう個体間の相互作用が、
――恋
と考えるならば――
当然、
――恋は、人の心の反応ではありえない。
との結論に至ります。
人の心は――
基本的には――
個体の一部――おそらくは、脳の内部――で完遂されうる事象だからです。
以上のような小難しい理屈を並べなくても――
恋が、体と体との触れ合いを抜きにしては、なかなか充足されないことは――
経験的に、よく知られています。
もし――
恋について――
体と体との触れ合いを度外視して語っていたら――
それは――
たぶん、恋ではなく、
――恋以外の何か
です。