マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

水に流しても、消えない

 いわゆる、

 ――水に流す。

 といういい方は――
 すでに自分の心の内にある負の感情を、

 ――なかったことにする。

 ということだ、と――
 きのうの『道草日記』で述べました。

 この国で生まれた、

 ――恣意の及ぼし方の技巧

 の1つである、と――

 ……

 ……

 たしかに――
 技巧の1つではあるのですが――

 この技巧は――
 自分の心の内にある負の感情を無視するという意味では、なかなかに危険である――
 という側面があります。

 感情を無視するのは――
 それが自分の感情であろうと、他人の感情であろうと――
 本来、危険なことです。

 とりわけ自分の感情を無視するということは――
 心のバランスを失いやすい――

 不自然きわまりないことです。

 その危険は――
 自然に逆らって自然のしっぺ返しを食らうのと同じです。

 ……

 ……

 その危険を十分にわかった上で――
 僕らは、

 ――水に流す。

 のがよいのです。

 「水に流す」というと――
 そこにある感情が、どこかに消えていくように感じられますが――

 実際には――
 そこにある感情を、ただ無視するだけのことです。

 無視しているうちに、自然と消える可能性はあるのですが――
 それは、あくまで、

 ――自然と消える。

 のであって――
 自分が恣意的に消しているわけではありません。

 水に流すときには――
 その点を十分に考慮する必要があります。