――不自然らしい自然が存在しうる。
ということを――
きのうの『道草日記』で述べました。
つまり、
――実際には、自分の恣意は及んでいないのに、及んだかのように思い込みうる。
ということです。
……
……
この人の性質は、
(案外、ヒトという生物種を最も特徴づけているのかもしれない)
と――
僕は思っています。
生物種としてのヒトの最大の特徴は――
この地球上で最も目立った繁殖や繁栄を遂げているようにみえる――
という点です。
そんなことが――
なぜ可能であったのか――
……
……
それは――
自分が恣意を及ぼして自然を巧みに制御することによって――つまり、不自然によって――
ヒトの繁殖や繁栄の妨げとなる因子を一つひとつ排除していったからです。
その過程では――
おそらく、偶然の幸運も寄与したに違いありません。
一見、自分の恣意が及んだようで、実は及ばなかった結果、たまたまヒトの繁殖や繁栄に貢献した――
という現象が――
相当数あったはずです。
例えば――
勘だけを頼りにさまよっていたら、豊富な食料を採取しうる地を見出せた、とか――
農耕や牧畜の手法を闇雲に変えていったら、何となく巧くいってしまった、とか――
祈祷が奏効して、食料の備蓄が尽きる前に干ばつの異常気象が終息した、とか――
敬虔に暮らしていた結果、自然災害の直撃を免れ、無事に次世代を残せた、とか――
そうした現象は――
あきらかに自分の恣意が及んだ結果とはいえないわけですから――
おそらくは、
――自然の現象
の結果なのですが――
でも――
人は、そうは考えない――
――これも、自分の恣意が及んだ結果である。
と錯覚をする――
それゆえに――
ますます自分の恣意を周囲へ及ぼそうと活気づく――
そのような――
いってみれば、
――驕慢
ないし、
――無垢な楽観
の性質が、人にはあって――
それが、今日のヒトの繁殖や繁栄の素因になっているのだとしたら――
……
……
――実際には、自分の恣意は及んでいないのに、及んだかのように思い込みうる。
という人の性質は――
ヒトをヒトたらしめる最大の特徴といえるのかもしれません。