マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

驕慢→謙譲、無垢な楽観→老練な悲観

 人は――
 概して、

 ――無垢な楽観

 を抱き、

 ――驕慢

 に生きようとし――

 やがて――
 様々な挫折を重ねていって――
 しだいに、

 ――老練な悲観

 を抱き、

 ――謙譲

 に生きるようになる、と――
 僕は考えています。

 きのうの『道草日記』で、

 ――驕慢

 や、

 ――無垢の楽観

 は、生物種としてのヒトの特徴であると述べたのは――
 そうした考え方が基盤にあったからです。

 人は――
 生まれながらに驕慢で――
 “無垢の楽観”を胸に秘め――
 自分の周囲へ恣意を及ぼすことに積極的である――

 が――
 恣意を及ぼそうとして、巧くいかず、何度も周囲に跳ね返される過程で――
 いつしか謙譲となり――
 “老練な悲観”を胸に秘め、自分の周囲へ恣意を及ぼすことに消極的となる――

 そういうことではないか、と――
 僕は思うのです。

 ……

 ……

 ここで述べた「驕慢」や「無垢の楽観」、あるいは「謙譲」や「老練の悲観」は――
 人の感情の背景の部分に深く関わっていると考えられます。

 ――感情の背景の部分

 とは――
 どういうことか――

 ……

 ……

 ――感情

 と一言でいっても――
 その実態は複雑です。

 感情は、少なくとも2つに分けられます。

 一般には、「正の感情」「負の感情」というように――
 感情の性質によって――つまり、自我や他者にとって好ましいか好ましくないかによって――分けられることが多いのですが――

 より重要なのは、

 ――前景の感情

 ――背景の感情

 という分け方です。

 前景の感情は、

 ――情動

 といいます。

 情動は――
 周囲の事象に反応して起こっていく感情であり――
 顕著かつ突発的な感情です。

 典型的には――
 歓喜や憤怒などが含まれます。

 一方――
 背景の感情は、

 ――気分

 といいます。

 気分は――
 周囲の事象とは独立に起こっている感情であり――
 隠微かつ持続的な感情です。

 典型的には――
 高揚や憂鬱などが含まれます。

 つまり――

 人は――
 概して――
 生の前半を、驕慢かつ楽観的な気分で過ごし――
 生の後半を、謙譲かつ悲観的な気分で過ごす――

 少なくとも――
 生物種の集団としてみたときには――
 そうした傾向にあるといえる――

 そういうことを――
 僕は主張したいのですね。

 さらにいえば――

 驕慢かつ楽観的な気分は――
 ヒトをして――
 この地球上に殖(ふ)え、栄えさせることに寄与し――

 謙譲かつ悲観的な気分は――
 ヒトをして――
 この地球上に残り、しがみつかせることに寄与してきた――

 つまり――

 生物種としてのヒトは――
 若くして驕慢かつ楽観的な気分であるから――
 空前の繁殖や繁栄を遂げ――
 老いて謙譲かつ悲観的な気分であるから――
 絶滅を防ぎ続けてこれた――

 そういうことです。