感情労働で問題になってくるのは――
乖離しがちな、
――建前
と、
――本音
とを――
職務上、常に一致させることが求められる点です。
建前と本音とを一致させるには――
2通りのやり方しかありません。
――建前を本音に合わせる。
か、
――本音を建前に合わせる。
かのどちらかです。
概して――
西欧では、建前を本音に合わせるのが、ふつうと思われているようです。
たしかに――
ヨーロッパのホテルに泊まっているときに――
スタッフの男性から、親切そうな表情や口調で、身も蓋もない本音を聞かされたことがあります。
表情や口調が洗練されていたので――
とくに不愉快な気分になることはありませんでしたが――
(いかにも西欧的だな)
と感じ入りました。
一方――
この国では、本音を建前に合わせるのが推奨される傾向にあります。
例えば――
接客業などで、
――真心からのおもてなしを――
といったスローガンがみられるのは、
――建前で歓待するのではなく、本音で歓待するのがよい。
との前提があるからです。
これは――
危険です。
建前には――
いくらでも恣意を及ぼすことができます。
よって――
建前は、
――不自然
です。
が――
本音には、なかなか恣意を及ぼすことができません。
本音は、
――自然
なのです。
その“自然の本音”を、“不自然の建前”に合わせる――
それが――
この国では、「好ましい」とされていて――
概して――
西欧では、「好ましくない」とされているのですね。
……
……
――感情労働
の観点は――
西欧で生まれました。
この国で一般的になったのは――
ここ10年くらいです。
いち早く感情労働の問題に気づける土壌が――
西欧にはあって――
この国にはなかった――
そういうことであろうと思います。