マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

今川義元のこと(22)

 今川(いまがわ)義元(よしもと)は――
 人の気持ちがよくわかる人ではなかったか、と――
 僕は思っています。

 人の話によく耳を傾け――
 人をよく信じ、よく任せ――
 最後の責めは一身に負う――

 そんな――
 好人物ではなかったか、と――
 僕は思っています。

 そんな好人物ぶりが――
 桶狭間(おけはざま)の戦いの顛末で雲散霧消してしまったのではないか――

 そんなふうに――
 思っています。

 ……

 ……

 TVドラマや映画などで描かれる――
 今川義元・最期の場面は――

 見苦しいものばかりです。

 戦勝気分に浸って油断しているところを――
 織田信長の兵に急襲され――
 輿で逃げ惑った挙句に刺し殺される――
 といったものばかり――

 そうではなくて――

 例えば――

 ……

 ……

 ――なんじゃ? 騒がしいの。

 ――ただ今、みて参ります。

 ――まさか尾張の兵ではあるまいの。

 ――申し上げます! 織田方の兵が押し寄せて参ります!

 ――まこと尾張の兵か! どこの手の者か?

 ――織田弾正忠(信長)が旗本と見受けます!

 ――弾正忠? まさか……。

 ――ここは、いったんお退き下され!

 ――おぉ、あの旗印は、たしかに五つ木瓜――弾正忠、見事な采配じゃ。

 ――殿!

 ――是非に及ばず。この首、弾正忠にくれてやるわ。

 ――なりませぬ!

 ――もう、よい。勝負はついておる。

 ……

 ……

 そんな泰然とした今川義元の最期が、たまには描かれても――
 悪くはないと思うのですが――

 いかがなものでしょう。

 ……

 ……

 ちょっと泰然としすぎていますかね。