マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

「病的か否か」は「異常か否か」

 ――“気分の沈み込み”や“気分の浮き上がり”が病的か否かは、了解可能か否かで判断をする。

 ということを――
 おとといの『道草日記』で述べました。

 ただし――
 了解可能か否かの判断が多分に主観的であるために――
 例えば、病的な“気分の沈み込み”――つまり、鬱(うつ)――と、病的でない“気分の沈み込み”との間に、明確な境界を引くことはできない――
 ということも――
 きのうの『道草日記』で述べました。

 ……

 ……

 医学では――
 通常、

 ――病的か否か

 は、

 ――異常か否か

 で判断をします。

 厳密には、

 ――心身によって有害ないし不利な異常のみを「病的」とみなす。

 ということです。

 異常か否かは――
 統計的に判断をします。

 何らかの形で数値化をして――
 それら数値を順に並べ、上位および下位を、

 ――異常

 とみなします。

 BMI(body-mass index)などは――
 その典型です。

 BMIとは、

  体重(kg)/身長(m)の2乗

 で算出される指数です。

 多くの場合――
 16未満および30以上が「異常」とみなされます。

 ごく形式的かつ非主観的な判断です。

 が――

 気分の浮き沈みについては――
 このような数値化の手法が使えません。

 そもそも――
 気分の浮き沈みについて――
 どのような数値化が可能であり、かつ有効なのかが――
 大問題なのです。

 実は――
 気分の浮き沈みの数値化は、すでに半世紀くらい前から試みられています。

 系統的な質問と回答とに基づく数値化です。

 砕けていえば、

 ――アンケートによる数値化

 です。

 すぐにおわかりのように――

 “アンケートによる数値化”は――
 その数値化の過程に患者自身の主観や医療従事者の主観が深く関わっているという点において――
 BMIのような数値化とは本質的に別です。

 ……

 ……

 もちろん――

 23世紀や24世紀には――
 気分の浮き沈みについても、BMIのような数値化の手法が見出されているでしょう。

 そうなれば――
 鬱や躁の判断も、形式的かつ非主観的になるはずです。

 が――
 21世紀初頭の現代では――

 それは――
 夢物語です。