感染症では軽症者と重症者とで注意すべき点が全く違う、ということを――
きのうの『道草日記』で述べました。
すなわち――
軽症者については、いかに確実に未感染の人たちから引き離すかが大切であり――
重症者については、いかに迅速に未感染の人たちから引き離し、かつ、いかに迅速に治療を受けさせるかが大切である――
と――
軽症者についてのキーワードは、
――確実に――
であり――
重症者についてのキーワードは、
――迅速に――
である――
とも述べました。
よって――
おとといの『道草日記』で述べたように、“感染拡大の抑圧”を本気で試みるなら――
1)軽症者を確実に隔離すること、および、2)重症者を迅速に特定し、治療すること――
の2つが必要です。
――軽症者を確実に隔離する。
とは、
――感染が疑わしき人たちは残らず隔離する。
ということです。
その際には、隔離される人たちの中に未感染の人が少しくらい混じっても仕方がないとします。
また、
――重症者を迅速に特定し、治療する。
とは、
――軽症者の中から重症化する人を即座に発見し、選択的に治療する。
ということです。
幸い、感染症の場合は、脳卒中や心臓発作などと違って、発病と同時に重症化することは、そんなに多くありません――発病当初は、たいていは軽症なのです。
よって、軽症者を確実に隔離して、十分な病状観察の体制をとっていれば、重症者を迅速に特定することは、それほど難しくありません。
つまり――
“感染拡大の抑圧”を本気で試みるなら、軽症者を確実に隔離することが何よりも優先され、重症者への対応は、軽症者への対応の延長で行う――
ということになります。
では――
軽症者を確実に隔離するには、どうしたらよいでしょうか。
……
……
おそらく――
専用の収容施設を用意しておく以外にありません。
自宅で隔離させたのでは――
何といっても、軽症者のキーワードである、
――確実に――
が担保されません。
では――
そのような収容施設を1日あたり何人分くらい用意しておけばよいでしょうか。
それは――
軽症者が、どれくらいの頻度で発生するかによります。
1日あたり――
10万人に1人か――
1000人に1人か――
日本国の場合――
人口を1憶人とみつもると――
10万人に1人であれば、1000人――
1000人に1人であれば、10万人――
です。
が――
いわゆる新型コロナ・ウイルス感染症のような感染力の強い感染症では――
軽症者の発生が、
――1日あたり10万人に1人
というような低頻度は考えにくいといえます。
――1日あたり1000人に1人
場合によっては、
――1日あたり300人に1人
とか、
――1日あたり100人に1人
といった高頻度を覚悟する必要があります。
ちなみに――
現況の新型コロナ・ウイルス感染症についていえば――
直近の10日間、世界中ざっと30万~100万人くらいの感染が新たに確認されているようです。
先ほども指摘したように――
感染症は、発病当初は、ほとんどが軽症です。
日本国は、政府の方針で、感染の確認は重症してからとってきましたが――
多くの国々では、そのような方針をとっていないそうです。
よって――
現況の新型コロナ・ウイルス感染症について――
軽症者の発生数は、感染が新たに確認された数と同じ――
つまり、
――1日あたり3万~10万人くらい――
とみなしてよいでしょう。
世界の人口を100億人とみて――
その数字を分母にすえると――
発生の頻度は、だいたい、
――1日あたり1万~3万人に1人
となります。
これは、あくまで確認されている感染者の数――おそらくは、軽症者の数とほぼ同じ――をもとにしていますから――
確認されていない感染者を含めれば、少なくとも、その3倍はいるでしょう。
いえ――
ひょっとすると、10~30倍はいるかもしれません。
ちなみに、
――1日あたり1万~3万人に1人
という頻度の30倍は、
――1日あたり300~1000人に1人
です。
以上の概算から――
先ほど挙げた、
――1日あたり1000人に1人
という数字――日本国についていえば、
――1日あたり10万人
という数字――は、十分に現実的であるとわかります。
よって、
――軽症者を確実に隔離する。
というのは――
言葉でいうほど簡単ではないのですね。
日本国についていえば――
専用の収容施設を1日あたり10万人分も用意しなければならない――
――それは無理だろう。
と訝る向きが殆(ほとん)どかと思います。
が――
もし、本気で“感染拡大の抑圧”を試みるなら――
それくらいは用意する必要があるのです。