マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

愚かさと賢さと――昆虫の走光性で考える

 ――愚かさと賢さとは表裏一体である。

 ということを――

 きのうの『道草日記』で述べました。

 

 このことは――

 例えば、空中を飛ぶ昆虫の走光性を考えると――

 よくわかります。

 

 昆虫には、空中を飛ぶものと飛ばないものとがあり――

 飛ぶ昆虫の多くには、“正の走光性”が認められます。

 

 ここでいう、

 ――走光性

 とは、

 ――日や月の光に応答をして運動をする性質

 であり、

 ――正の走光性

 とは、簡単にいうと、

 ――光に向かって行く性質

 のことです。

 

 この性質があるために――

 飛ぶ昆虫は、自身の位置を正確に捉えることができ、生存に危険な暗所に紛れ込んだ時でも、無事に脱出ができる――

 と考えられます。

 

 つまり――

 その昆虫は、“正の走光性”を備えているがゆえに、個体の生存の可能性を有意に高めている――

 と考えられます。

 

 よって――

 その昆虫は、

 ――正の走光性

 を備えているために、

 ――賢い

 といえるのです。

 

 ところで――

 そのような“賢い昆虫”が、蠟燭や白熱灯などの人工の光源に遭遇をすると、どうなるか――

 

 その光源の周囲を永続的に飛び続けることになります。

 中には光源と接触をし、焼け死んでしまうものもある――

 

 つまり――

 その“賢い昆虫”は、“正の走光性”を備えているがゆえに、個体の生存の可能性を有意に低めている――

 と考えられます。

 

 よって――

 その“賢い昆虫”は、

 ――正の走光性

 を備えているために、

 ――愚かである

 といえるのです。

 

 ここで――

 簡単な思考実験をしてみましょう。

 

 そのような走光性は、おそらくは複数の遺伝子の発現によって、少なくとも部分的な制御を受けていると考えられます。

 

 よって――

 それら遺伝子の中から幾つかを適切に選び、その発現を抑えてしまうと――

 走光性は消えてしまうはずです。

 

 走行性を失った昆虫は――

 自身の位置を正確に捉えることができず、生存に危険な暗所に紛れ込んだら、無事に脱出をすることができない――

 つまり、

 ――愚かである

 とみなされるでしょう。

 

 そのような“愚かな昆虫”が――

 人工の光源に遭遇をする時は、どうか――

 

 おそらく――

 その光源に惑わされて接触をすることによって焼け死ぬようなこともなく、無事に光源の傍らを通り過ぎることができるでしょう。

 

 さて――

 この“愚かな昆虫”と先ほどの“賢い昆虫”とでは、いったい、どちらが愚かであり、どちらが賢いのでしょうか。

 

 簡単には決められませんね。

 

 ――愚かさと賢さとは表裏一体である。

 とは――

 そういう意味です。