――愚かさと賢さとは表裏一体である。
ということは、空中を飛ぶ昆虫の走光性の観点から考えると、よくわかる――
ということを、きのうの『道草日記』で述べました。
昆虫の走光性は、
――合目的性
が感じられることから、
――知能
の一種といえますが――
この性質は――
特定の遺伝子の発現によって制御をされていると考えられるために――つまり、先天的に備わっていると考えられるために――
知能としては、あきらかに原始的です。
つまり――
昆虫の走光性は、あきらかに、
――本能
です。
よって、
――愚かさと賢さとが表裏一体であるという主張は、本能の範疇で考えるからこそであって、知能全般の範疇で考えれば、その主張は崩れるのではないか。
との疑念が残ります。
が――
僕は、
(そんなに簡単には崩れない)
と考えています。
本能であろうと、知能全般であろうと、
――合目的性
は感じられます。
そのほかに、
――知能
には、
――定目的性
が感じられます。
――定目的性
とは、
――何らかの目的が設定をされたようにみえること
です。
目的が、知能それ自体によって主体的に設定をされていようが、遺伝子の次元によって本能的に既定をされていようが――
その目的を成しうる・成しえないについては、本質的な差異はありません。
――愚かさ
とは、
――知能が目的を成しえない様子
であり、
――賢さ
とは、
――知能が目的を成しうる様子
であるからです。
そのことは――
高度な知能をもっている人が、過去の成功体験に拘泥をし、誤った目的を定め、その結果、再起不能の失敗に陥ってしまうような事例が、数多く知られていることからも――
よくわかります。
そのような人の多くは、過去に失敗をしなかったという意味では、たしかに賢かったのですが――
そのときの経験に拘るあまり、状況が変わっていたにもかかわらず、同じ目的を定め、今度は再起不能の失敗をしてしまったという意味では、たしかに愚かであったのです。