価値評価の疑似空間の原点が移ろえば――
その移ろいとは正反対の方向へ――
自分の意志が移ろうのを感じるはずである。
原点が移ろうということは――
座標軸が移ろうということだからである。
例えば――
価値評価の疑似空間が 3 次元とみなす時に――
その原点が、
速度(0.1,0.1,0.1)
で移ろえば――
自分の意志は、
速度(−0.1,−0.1,−0.1)
で移ろうのを感じるはずである。
よって――
自分の意志を、
速度(1,1,1)
で移ろわせれば――
価値評価の疑似空間では、
速度(0.9,0.9,0.9)
で移ろうのを感じる。
そうすれば――
自分の意志は、原点の先回りをして移ろうことになる。
今――
原点の移ろいとは――
人の世の大多数を占める凡人たちの意志の相加平均――つまり、凡人たちの総意――であった。
つまり――
自分の意志が、あたかも凡人たちの総意を導いているかのように思えるのである。
これが、
――英傑の指導性
の原理であろう。
英傑であることに必要なのは――
自分の意志を凡人たちに行き渡らせることではない。
凡人たちの総意の移ろいに、いち早く気づき――
その移ろいの速度よりも十分に大きな速度で――
自分の意志を移ろわせることである。
『随に――』