マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

凡人たちと非凡の者との垣根

 英傑とは、非凡の者であり――

 その非凡の者が、凡人たちに働きかけ――

 その総意を、自分の意志と同じ速度で、移ろわせる――

 と考えている者がいるとすれば――

 

 その者は、

 ――凡人たちの総意

 の頑強さを――

 少し甘くみすぎている。

 

 凡人たちは人の世の大多数を占めている。

 

 その数は、あまりにも夥(おびただ)しい。

 

 少なく見積もっても――

 この国では数百万――

 世界全体では数億――

 

 この巨大な集合に働きかける時――

 その一部の者たちの意志を移ろわせるくらいのことなら、できるかもしれぬ。

 

 が――

 その全ての者たちの意志を移ろわせることなどは、到底できはせぬ。

 

 知略や武勇、胆力に秀でた非凡の者が――

 自身の知略や武勇、胆力の全てを注ぎ込んで凡人たちに働きかけたところで――

 

 その真意が凡人たちによって本当の意味で受け入れられるわけがない。

 

 凡人たちに非凡の者の真意が理解をされるはずがない。

 

 もし理解をされるのであれば――

 その「凡人」は、

 ――実は凡人ではなかった。

 ということである。

 

 ――凡人たちと非凡の者との垣根

 を見落としてはならぬ。

 

 見落とすと――

 

 歴史が、わからなくなる。

 

 『随に――』