マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

再び「精神の意義」へ(9)

 熱力学の自由エネルギー(free energy)を定める等式、

  F (t) = U (t) − TS (t)

 の発想に基づいて、

 ――精神の意義

 を考えるとしたら――

 

  X (t) = S (t) − Q (t)

 という等式が鍵となる。

 

 ここで――

 等式、

  F (t) = U (t) − TS (t)

 について――

 t は時刻であり――

 F (t) は、ある自然界の部分における状態の自由エネルギーであり――

 U (t) は、その状態の内部エネルギー(internal energy)であり――

 T は、その状態の絶対温度であり――

 S (t) は、その状態のエントロピー(entropy)である。

 

 また――

 等式、

  X (t) = S (t) − Q (t)

 について――

 t は時刻であり――

 X (t) は、S (t) および Q (t) で定義をされる量であり――

 S (t) は、身体の持ち主にとっての“身体の外部における状態のエントロピー”であり――

 Q (t) は、身体が、q (x; t) に関わる情報を身体の内部に留める結果、身体の内部における状態に発生をするエントロピーであり――

 q (x; t) は、身体の持ち主が、身体の外部における状態について、主観的に見積もる確率であり――

 x は、身体の外部における状態を決める変数である。

 

 なお、定数の項は、いずれも省いている。

 

 ……

 

 ……

 

 熱力学では――

 自然界で起こる化学反応などの反応は、自由エネルギー F (t) が減る方向に進む――

 と考える。

 

 それと同じように、

 ――精神の意義

 も考えられぬか。

 

 例えば――

 身体の内部で起こる反応は、X (t) という量が減る方向に進む――

 というように――

 

 ……

 

 ……

 

 もし、そのように考えるなら――

 X (t) の数式の内容について、改めて吟味をする必要があろう。

 

 X (t) は、

  X (t) = S (t) − Q (t)

 で定義をされ――

 

  S (t) = ∫ q (x; t)(− ln p (x, s; t))dx

 であり、

  Q (t) = ∫ q (x; t)(− ln q (x; t))dx

 であるから――

 

  X (t) = ∫ q (x; t){− ln p (x, s; t) −(− ln q (x; t))}dx

 であった。

 

 ただし――

 p (x, s; t) は、身体の持ち主が、身体の外部における状態について、感覚器を通して察する確率であり――

 − ln p (x, s; t) は、身体の持ち主が、身体の外部における状態について、感覚器を通して察するエントロピーであり――

 ln は、高校の数学で学ぶ自然対数であり――

 s は、身体の感覚器が受け取る信号を決める変数である。

 

 ……

 

 ……

 

  X (t) = ∫ q (x; t){− ln p (x, s; t) −(− ln q (x; t))}dx

 という数式から判ることは2つある。

 

 1つは、X (t) が t の関数であるだけでなく、s の関数でもある、ということ――

 もう1つは、X (t) が q (x; t) という関数の汎関数でもある、ということだ。

 

 ――汎関数

 とは、

 ――関数の関数

 である。

 

 例えば――

 関数は、変数 a を用い、

  f (a)

 と表される。

 

 この場合、変わるの変数 a それ自体だ。

 

 汎関数は、変数 a の関数 g (a) を用い、

  f ( g (a) )

 と表される。

 

 この場合、変わるのは変数 a ではなく、関数 g (a) の内容である。

 

 まとめると――

 

  X (t) = ∫ q (x; t){− ln p (x, s; t) −(− ln q (x; t))}dx

 という数式から判ることは――

 X (t) が、時刻 t の関数であるだけでなく、変数 s の関数でもあり、かつ関数 q(x, t) の汎関数でもある――

 となる。

 

 では――

 これら、s や q (x, t) は何によって決められているのか。

 

 ……

 

 ……

 

 身体によって、である。

 

 身体は、時刻 t において、できるだけ X (t) の量が減るように、s や q (x, t) を決めている。

 

 つまり、

 ――精神の意義

 は、できるだけ X (t) の量が減るように、s や q (x, t) を身体に決めさせていることにある――

 といえる。

 

 『随に――』