熱力学の自由エネルギー(free energy)を定める等式、
F (t) = U (t) − TS (t)
の発想に基づいて、
――精神の意義
を考えるとしたら――
X (t) = S (t) − Q (t)
という等式が鍵となる。
ここで――
等式、
F (t) = U (t) − TS (t)
について――
t は時刻であり――
F (t) は、ある自然界の部分における状態の自由エネルギーであり――
U (t) は、その状態の内部エネルギー(internal energy)であり――
T は、その状態の絶対温度であり――
S (t) は、その状態のエントロピー(entropy)である。
また――
等式、
X (t) = S (t) − Q (t)
について――
t は時刻であり――
X (t) は、S (t) および Q (t) で定義をされる量であり――
S (t) は、身体の持ち主にとっての“身体の外部における状態のエントロピー”であり――
Q (t) は、身体が、q (x; t) に関わる情報を身体の内部に留める結果、身体の内部における状態に発生をするエントロピーであり――
q (x; t) は、身体の持ち主が、身体の外部における状態について、主観的に見積もる確率であり――
x は、身体の外部における状態を決める変数である。
なお、定数の項は、いずれも省いている。
……
……
熱力学では――
自然界で起こる化学反応などの反応は、自由エネルギー F (t) が減る方向に進む――
と考える。
それと同じように、
――精神の意義
も考えられぬか。
例えば――
身体の内部で起こる反応は、X (t) という量が減る方向に進む――
というように――
……
……
もし、そのように考えるなら――
X (t) の数式の内容について、改めて吟味をする必要があろう。
X (t) は、
X (t) = S (t) − Q (t)
で定義をされ――
S (t) = ∫ q (x; t)(− ln p (x, s; t))dx
であり、
Q (t) = ∫ q (x; t)(− ln q (x; t))dx
であるから――
X (t) = ∫ q (x; t){− ln p (x, s; t) −(− ln q (x; t))}dx
であった。
ただし――
p (x, s; t) は、身体の持ち主が、身体の外部における状態について、感覚器を通して察する確率であり――
− ln p (x, s; t) は、身体の持ち主が、身体の外部における状態について、感覚器を通して察するエントロピーであり――
ln は、高校の数学で学ぶ自然対数であり――
s は、身体の感覚器が受け取る信号を決める変数である。
……
……
X (t) = ∫ q (x; t){− ln p (x, s; t) −(− ln q (x; t))}dx
という数式から判ることは2つある。
1つは、X (t) が t の関数であるだけでなく、s の関数でもある、ということ――
もう1つは、X (t) が q (x; t) という関数の汎関数でもある、ということだ。
――汎関数
とは、
――関数の関数
である。
例えば――
関数は、変数 a を用い、
f (a)
と表される。
この場合、変わるの変数 a それ自体だ。
汎関数は、変数 a の関数 g (a) を用い、
f ( g (a) )
と表される。
この場合、変わるのは変数 a ではなく、関数 g (a) の内容である。
まとめると――
X (t) = ∫ q (x; t){− ln p (x, s; t) −(− ln q (x; t))}dx
という数式から判ることは――
X (t) が、時刻 t の関数であるだけでなく、変数 s の関数でもあり、かつ関数 q(x, t) の汎関数でもある――
となる。
では――
これら、s や q (x, t) は何によって決められているのか。
……
……
身体によって、である。
身体は、時刻 t において、できるだけ X (t) の量が減るように、s や q (x, t) を決めている。
つまり、
――精神の意義
は、できるだけ X (t) の量が減るように、s や q (x, t) を身体に決めさせていることにある――
といえる。
『随に――』