マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

再び「精神の意義」へ(5)

 ――精神の意義

 に関わる3つの“情報”、

 ――身体の外部の部分情報

 ――身体の内部の全体情報

 ――身体の内部の部分情報

 の量を示す上で、身体の外部の状態のエントロピー(entropy)、

  S (t) = ∫ q (x; t)(− ln p (x, s; t))dx

 は、重要な役割を果たす。

 

 ここでいう、

 ――精神の意義

 とは、

 ――“身体の外部の部分情報”を受け入れ、“身体の内部の全体情報”を書き換えた上で、そのことを基に“身体の内部の部分情報”を生み出し、それを送り出すこと――

 を指す。

 

 身体が、時刻 t から時刻 t + Δt にかけて受け入れる、

 ――身体の外部の部分情報

 の量 ΔI (t) は、

  ΔI (t) = − Δ{∫ q (x; t)(− ln p (x, s; t))dx}

 で表され――

 

 身体が、時刻 0 から時刻 t にかけて受け入れる、

 ――身体の内部の全体情報

 の量 I (t) は、

  I (t) = − ∫ q (x; t)(− ln p (x, s; t))dx + C

 で表される。

 

 ただし――

   Δ{∫ q (x; t)(− ln p (x, s; t))dx} 

 は、

 

   ∫ q ( x; t + Δt )(− ln p ( x, s; t + Δt ))dx

   − ∫ q (x; t)(− ln p (x, s; t))dx

 

 であり――

 先頭の記号 Δ は差分――離散化をされた微分――を表す。

 

 また――

 q (x; t) は、身体の持ち主が、身体の外部の状態について、主観的に見積もる確率であり――

 x は、身体の外部の状態を決める変数であり――

 − ln p (x, s; t) は、身体の持ち主が感覚器を通して察するエントロピー(entorpy)であり――

 ln は、高校の数学で学ぶ自然対数であり――

 s は、身体の感覚器が受け取る信号を決める変数であり――

 C は、定数である。

 

 ……

 

 ……

 

 ここで――

 

 身体が、時刻 t から時刻 t + Δt にかけて送り出す、

 ――身体の内部の部分情報

 の量を考えよう。

 

 これは――

 いったい、どのような量なのか。

 

 ……

 

 ……

 

 すぐに気がつくのは――

 

 身体は、時刻 t から時刻 t + Δt にかけて受け入れる、

 ――身体の外部の部分情報

 の全てを、時刻 t から時刻 t + Δt にかけて送り出すことが、できるのか――

 との問いである。

 

 答えは、

 ――否

 だ。

 

 なぜなら――

 身体は、少なくとも q (x; t) に関わる情報だけは絶対に送り出すことができぬからである。

 

 後刻――時刻 t + Δt から時刻 t + 2Δt にかけて――身体は、

 ――身体の外部の部分情報

 を受け入れねばならぬ。

 

 q (x; t) とは、身体の持ち主が、身体の外部の状態について、主観的に見積もる確率であった。

 

 この q (x; t) に関わる情報の量は――

 実は、簡単に判る。

 

   − Δ{∫ q (x; t)(− ln q (x; t))dx}

 である。

 

 身体の外部の状態のエントロピー S (t) のうち、

  − ln p (x, s; t)

 を、

  − ln q (x; t)

 に置き換えた数式の差分だ。

 

 身体が受け入れるのは、あくまでも − ln p (x, s; t) に関わる情報であるが――

 それは、身体の持ち主にとっては、− ln q (x; t) に関わる情報である。

 

 この情報を――

 身体は、時刻 t + Δt から時刻 t + 2Δt にかけて、

 ――身体の外部の部分情報

 を受け入れるのに備えるため、決して身体の外部へ送り出すことができぬ。

 

 もし、送り出してしまえば、q (x; t) に関わる情報が失われ、

 ――身体の外部の部分情報

 の量 ΔI (t) 、

  − Δ{∫ q (x; t)(− ln p (x, s; t))dx}

 を求められなくなる。

 

 よって――

 身体が、時刻 t から時刻 t + Δt にかけて身体の外部に送り出せる情報の量は――

 身体が、時刻 t から時刻 t + Δt にかけて身体の内部に受け入れた情報の量 ΔI (t) のうち、q (x; t) に関わる情報の量を差し引いて残る量であるはずだ。

 

 その“残る量”を ΔR (t) とすれば、

 

  ΔR (t)

  = ΔI (t) −[− Δ{∫ q (x; t)(− ln q (x; t))dx}]

  = − Δ{∫ q (x; t)(− ln p (x, s; t))dx}

   −[− Δ{∫ q (x; t)(− ln q (x; t))dx}]

  = − Δ{∫ q (x; t)(− ln p (x, s; t))dx

   − ∫ q (x; t)(− ln q (x; t))dx}

  = − Δ{∫ q (x; t)(− ln p (x, s; t))

   − q (x; t)(− ln q (x; t))dx}

  = − Δ[∫ q (x; t){− ln p (x, s; t)

   −(− ln q (x; t))}dx]

 

 である。

 

 この ΔR (t)  こそ――

 身体が、時刻 t から時刻 t + Δt にかけて送り出しうる、

 ――身体の内部の部分情報

 の量の上限といえる

 

 あえて差分の記号 Δ を用いずに表せば、

 

  R ( t + Δt ) − R (t)

  = ∫ q (x; t){− ln p (x, s; t)

   −(− ln q (x; t))}dx

   − ∫ q ( x; t + Δt ){− ln p ( x, s; t + Δt )

   −(− ln q ( x; t + Δt ))}dx

 

 もしくは、

 

  R ( t + Δt ) − R (t)

  = ∫{q (x; t)(− ln p (x, s; t))

   − q ( x; t+Δt )(− ln p ( x, s; t + Δt ))}dx

   − ∫{q (x; t)(− ln q (x; t))

   − q ( x; t+Δt )(− ln q ( x; t + Δt ))}dx

 

 となる。

 

 『随に――』