今日は朝から呼吸の状態が思わしくなかった。
例によって、喘息(ぜんそく)である。
昨夜、薬を休んだのが良くなかったらしい。
別に休もうと思って休んだのではなく――
気付いたら朝になっていただけのことである。
今夜は、ちゃんと飲もう。
*
作家・野村敏雄さんの 歴史小説『小早川隆景』(PHP文庫、2000年)で描かれている小早川隆景は、喘息を患っている。
ときは織豊後期――
文禄の役(第一次朝鮮出兵)に参陣した隆景は、喘息に苦しんだ。
碧蹄館の戦いの直後に発症している。
碧蹄館の戦いとは――
敗色の濃くなった日本軍が、無事の撤退を賭けて挑んだ大戦(おおいくさ)だ。
隆景が実質的に総大将を務めた。
この戦いに勝った日本軍は、何とか壊滅を免れ、九州に引き上げることができた。
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小早川隆景は、僕が子供の頃から好きな戦国大名の一人であった。
正確には、大名ではない。
毛利元就の三男であった隆景は、毛利家の家臣として、終生、分をわきまえ続けた。
にもかかわらず、天下人となった豊臣秀吉によって五大老の一人に抜擢されたことは、隆景の人物の大きさを雄弁に物語る。
五大老といえば、あの徳川家康や主君・毛利輝元と同列である。
破格の待遇といってよい。
そんな隆景も、喘息に苦しんでいたという。
もちろん小説の中でのことである。
真偽は知らぬ。
が、その喘息ゆえに――
僕は、ますます隆景に惹かれていった。
奇異な縁である。