――人災
という言葉をしばしば見聞きします。
――防災や減災に努めるべき人たちの不注意や怠慢によって、本来ならば防げたはずの災害を被ること――
くらいの意味でしょうか。
「天災」に比しての「人災」です。
つまり、人の過失が「天災」を過度に悪化させた場合に、「人災」となります。
ところが、この際の「人」には十分に注意をしなければなりません。
「人災」というと、つい特定の個人を標的にしてしまいがちなのですよね。
もちろん、そういうケースもあるでしょう。
誰かの非常識なまでの不注意や怠慢によって人災が起こることは、十分にありえます。
が――
そういうケースは、きわめて稀です。
実際には、特定の個人ではなく、特定の組織(組織化された個人集団)の不注意や怠慢によって、ほとんどの人災は起こっています。
よって、人災を起こした組織のトップは厳しく追及をされます。
ただし――
それは、あくまでも組織のトップとして追及を受けるのであって、純然たる個人として、ではありません。
「人災」という言葉を使うときには、このケジメをしっかりと意識しておくのがよいでしょう。
人災とは、多くの場合、組織論の括りで議論されるべき概念なのです。