美しいものを「美しい」と思うには――
記憶が必要だと思うのです。
あるものをみて、それを「美しい」と感じることは――
過去に、それと同じものを、あるいは、それと同じようなものをみたときの心地よい記憶が甦ることに相当するのではないか、と――
つまり、
――美しい。
というのは――
結局は、過去の心地よさに浸ることではないか、と――
そうであるならば――
当然、幼い子供は「美しい」と思うことそれ自体が少ないはずです。
逆に――
歳をとった人は「美しい」と思うことが、かなり多いでしょう。
ただし――
ただ歳をとってきただけの人では、やはり、ダメでしょうね。
若い頃から心地よさの記憶をたくさん蓄えてきた人でなければ――
審美眼は心地よさの記憶の豊かさからくるのではないでしょうか。