どんなときでも自然体でいられる人というのは――
誰にも期待をしていない人だろうと思います。
自分の周りにいる全ての人たちに期待をしない――
当然、自分自身にも期待をしない――
自分にも他者にも期待をしないから――
気負うことがないし、入れ込むこともない――
落胆することもないし、欣喜することもない――
――あなたには、ものすごく期待してるから!
といわれて、
――あ、そうですか。ありがとうございます。
と、社交辞令で返し――
――あなたには、ものすごく期待してたのに、こんなことになって残念だ!
といわれても、
――まことに申し訳ありませんでした。
と、定型語句で返す――
あるいは、
――私は、とんだ買いかぶりをしていたようだ!
と厭味をいわれて、
――はい。たぶん、そうなんでしょうね。
と、スっとぼけてみせる――
そういう人は――
たしかに、どんなときでも自然体でいられるだろうと思うのですが――
ただ――
そういう人が人として自然かどうかといわれれば――
ちょっと考え込んでしまいますね。
どんなときでも自然体でいられるということは、それ自体そんなに自然なことではない、という矛盾を――
思わずにはいられません。