いわゆる新型コロナ・ウイルス感染症のことが報道されるようになってから――
それなりに関心をもって、日本国内外の状況の把握に努めてきたのですが――
それでも――
きょうまで――
この感染症の恐さが、いま一つ、よくわかりませんでした。
これまでに報道されてきた内容のうち、医学的に信頼できそうな情報源からの内容を総合すると――
新型コロナ・ウイルス感染症は、
――感染者の10%~30%は重症化し、そのうちの3分の1くらいは重篤化し、場合によっては命を落とす一方で、残りの70%~90%は重症化しないために、それまで通りの生活を続けてしまい、仕事や行楽の場などで感染を広げてしまう。
という特徴があります。
この特徴こそが、新型コロナ・ウイルス感染症の恐さの根源なのですが――
それが頭ではわかっていても――
どうしても、ピンとこなかったのですね。
(それは、そうなんだろうけど……それの何が恐いの?)
と――
……
……
さらにいうと――
当初、中国・武漢市内で、新型コロナ・ウイルス感染症の治療にあたった医師らが、
――この感染症は何かが変だ。おかしい。
と戦慄をした肌感覚が――
僕には、よくわからなかったのです。
実は、世の中には、新型コロナ・ウイルス感染症以外にも、わけのわからないウイルス感染症というのが、ゴマンとありまして――
それらをこじらせ、毎年、一定数の人々が――とりわけ、お年寄りや持病のある方々が――命を落としている現実があります。
――ウイルス感染症をこじらせる。
というのは――
多くの場合は、早期に適切な対症療法を行わず――あるいは、行えず――気づいた時には細菌感染症を併発していて、慌てて抗菌薬などで細菌感染症の治療を始めたが、間に合わずに亡くなってしまう、というようなことを指します。
この場合に、恐ろしいのは、ウイルス感染症というよりは、細菌感染症です。
――え? 逆じゃないの?
と訝られる方がいるかもしれません。
たしかに、細菌感染症には抗菌薬という根治療法があり、ウイルス感染症には対症療法しかないので、一見、ウイルス感染症のほうが厄介に思えます。
が――
細菌感染症では、抗菌薬の使用開始時期が遅れると、その後、いくら抗菌薬を使っても功を奏さない、ということがあるのですね。
よって、より恐ろしいのは細菌感染症なのです。
正確には、
――細菌感染症の見逃し
ですね。
では――
当初、中国・武漢市内で新型コロナ・ウイルス感染症の治療にあたった医師らは、何を恐れたか――
おそらく、
――ウイルス感染症を疑って、すぐさま対症療法を開始し、かつ細菌感染症の見逃しもしていないのに、なぜか感染者がどんどん死んでいく。
という経過を恐れたのです。
昨今になって――
日本国内における感染症診療の専門家らの声も伝わってきています。
その要点は、
――新型コロナ・ウイルス感染症は、「重症化した」と思ったら、すぐに重篤化し、いったん重篤化したら容易には助けられなくなる。
です。
わずか数時間で一気に重症化から重篤化へ向かうといいます。
この速さは、細菌感染症の見逃しでもみられないような凄まじい速さです。
(なるほど――これが、恐ろしいのか)
それで、ようやく――
僕は合点がいきました。
そういう“速さ”があるならば――