マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

忘れられやすいブレイクスルーその1

 ――パラダイム・シフト(paradigm shift)に比べると、ブレイクスルー(breakthrough)は忘れられやすい。

 ということを、きのうの『道草日記』で述べました。

 

 具体的に、どのような事例が挙げられるでしょうか。

 

 ……

 

 ……

 

 すぐに思いつくのは、

 ――特殊相対性理論

 です。

 

 20世紀序盤、アルベルト・アインシュタイン(Albert Einstein)の特殊相対性理論は、時間や空間の認識に関し、苛烈かつ壮麗なパラダイム・シフトをもたらしたことは――

 あまりにも有名です。

 

 が――

 このパラダイム・シフトが、19世紀における、

 ――光の干渉法

 というブレイクスルーによってもたらされていることは――

 しばしば忘れさられています。

 

 ――光の干渉法

 とは、実験の技術です。

 光がもつ波の性質を用い、波の強め合いや打ち消し合いに着目をして波の周期や周期のズレ、周期の長さなどを見積もります。

 

 この技術によって――

 光の速さは、その光を観ている者の状態――動いているか止まっているかなどの状態――とは関係なく、常に一定であることが示唆をされ――

 その示唆を踏まえると、時間や空間は観測を行う者がおかれている状態に依存をしていると考えざるを得なくなりました。

 

 これが、特殊相対性理論パラダイム・シフトの核心です。

 

 このパラダイム・シフトの前後で、時間や空間の絶対性が否定をされ、それらの相対性が脚光を浴びるようになったのですが――

 その経緯は、多くの人たちが忘れません。

 

 が――

 このパラダイム・シフトが、

 ――光の干渉法

 というブレイクスルーによってもたらされたこと――

 さらにいえば、

 ――光の干渉法

 というブレイクスルーが起きなかったら、

 ――時間や空間の認識の変化

 というパラダイム・シフトは、おそらくは起こりえなかったこと――

 を忘れないでいられる人たちは、そう多くはないのです。