――精神医学の領域では、まだ生理学と解剖学とが混然一体となっている。
ということを、きのうの『道草日記』で述べました。
あるいは、
――精神医学における生理学的領域と解剖学的領域とは、まだ混然一体となっている。
と述べてもよいでしょうし、
――ヒトの神経系の機能と形態とは、まだ十分に解明をされていない。
と述べてもよいでしょう。
いずれも――
ほぼ同じ意味です。
さらにいえば――
――精神医学の領域での生理学
つまり、
――精神医学における生理学的領域
あるいは、
――ヒトの神経系の機能
は、深刻な分断を抱えています。
それを端的にいい表せば、
――心理と生理との分断
となるでしょう。
つまり――
人の精神の主観的な側面とヒトの神経系の客観的な側面との乖離です。
僕らは、
――ヒトの神経系が機能を発することで、人の精神が生じている。
と何となく信じています。
実際に――
ヒトの神経系の一部が外傷などで損壊をされると、人の精神の一部に変調をきたすことが、経験的に知られています。
が――
ヒトの神経系が機能を発している様子をどんなに詳細に思い描いていも――
その機能の発現が、なぜ人の精神の発生に通じうるのかが、よくわからないのです。
これは――
ヒトの心臓・血管系に準えていうならば、
――なぜ心臓が拍動をすることで血液循環が発生をするのかが、よくわからない。
ということに相当をします。
実に奇妙なことです。
おそらく――
僕らは、
――ヒトの神経系の機能
の全容を殆ど何も知らないのです。
よく考えてみたら――
僕らは、
――ヒトの神経系の形態
の全容も、厳密には知らないのですから――
当然といえば、当然です。
つまり――
ヒトの神経系は、その機能も形態も、よくわかっていない――
……
……
このような観点からいっても、
――精神医学の領域では、まだ生理学と解剖学とが混然一体となっている。
との主張は、それなりに妥当といえます。