――再起可能の失敗
を、
――再起不能の失敗
から選り分けるために、
――失われる人命の数の期待値が 1 未満
という基準を用いてはどうか――
ということを、きのうの『道草日記』で述べました。
つまり――
ある失敗について――
その失敗が起こったときに――
失われる人命の数の期待値が 1 未満であれば、
――再起可能の失敗
とみなし――
失われる人命の数の期待値が 1 以上であれば、
――再起不能の失敗
とみなす――
ということです。
――本当に「失われる人命の数の期待値が 1 未満」という基準でよいのか。
と訝る向きもあるでしょう。
例えば――
要人の警護の場面です。
通常、警護の対象となる要人は 1 人ですから――
失われる人命の数の期待値が 1 未満になるには、要人の命が失われる確率が 100 %未満であればよい――
ということになってしまいます。
つまり、
――確実に殺害をされるとわかっているのでなければ、殺害の危険性は無視をするべきである。
ということです。
たしかに――
おかしな結論です。
どこが間違っているのでしょう。
おそらく、
――警護の対象となる要人は 1 人であるから、失われうる人命の数は 1 である。
という点が間違っています。
警護の対象が 1 人であるからといって、失われうる人命の数が 1 であるとはいえません。
警護に当たる警察官等の命も失われる可能性があります。
また、要人の周囲に居合わせる人たちが巻き添えで命を落とす可能性もあります。
例えば――
要人が選挙の街頭演説を行っている場合は――
その場に少なく見積もっても数十人は居合わせるでしょう。
警護に当たる警察官も含めれば、100 人くらいにはなるはずです。
よって――
失われる人命の数の期待値が 1 未満になるには、要人の命が失われる確率が 1 %未満でなければならない――
ということになります。
数百人とか数千人とかが集まるような大規模な街頭演説なら――
その確率は、当然ながら、1 %を遥かに下回ります。