――後漢の魏王(ぎおう)
こと――
詩人でもあった。
――楽府(がふ)
の詩作が得意だったと伝わる。
音楽に合わせて唄う詩である。
戦乱に明け暮れていた時代――
陣中にあっても詩作に励んだという。
戦績が不甲斐なければ、
――文弱にも戦場で詩作に耽った。
と揶揄をされたであろう。
が――
曹操の戦績に申し分はない。
――赤壁の戦い
の敗走は――
その例外である。
……
……
曹操は――
なぜ陣中にあって詩作に励んだのか。
……
……
おそらくは――
自身の心を整えるためである。
戦場の苛烈な緊張の中で、あえて詩作に没頭をすることで――
冷静で鋭利な軍事判断の素地としていたのではあるまいか。
……
……
曹操は――
しばしば歴史の玄人らの耳目を集める。
その最大の理由は――
おそらくは――
この才知の多面性による。
『随に――』