精神は本当に目にみえるのか。
……
……
顔の表情や体の仕草の動きに着目をすれば――
みえる。
精神は、視覚で鮮やかに捉えることができ、観察を詳しく行うことができる。
が――
……
……
それら動きは――
同時に、身体の機能でもある。
精神は機能である。
――機能
とは、
――物体に潜在をしている能力
であり――
通常は、その物体が起こす事象ないし事象の連なりによって認識をされる。
ここに――
精神を目でみることの第一の難しさがある。
次いで――
精神は身体の機能である。
さらにいえば――
身体の機能の一部である。
精神と身体の機能の他の部分――身体の精神以外の機能――とを分けて考えることは――
大変に難しい。
――深部(しんぶ)腱反射(けんはんしゃ)
という事象が知られている。
――腱(けん)
とは太い骨と筋肉とを繋いでいる部分である。
この部分を緩めた状態で軽く叩くと――
筋肉が縮む。
例えば――
何かに座って足を浮かせ、膝小僧の下を軽く叩くと――
叩いた側の足が勝手に挙がる。
この動きを、精神と見なす者はいないであろう。
が――
座っている者が足を意識的に挙げれば――
それは精神である。
無意識的に挙げても――
それは――「無意識」の字義からいって――精神である。
――無意識
とは、
――精神のうち、自我によって意識をされない部分
と考えられている。
つまり――
深部腱反射が起こる時――
それが精神と直接の関連にないことを示すのは、容易ではない。
つまり、
――「精神」という身体の機能
と、
――「深部腱反射」という身体の精神以外の機能
とを分けて考えるのは、容易ではない。
ここに――
精神を目でみることの第二の難しさがある。
『随に――』