雪の降りしきる深夜――
仕事から帰ってきて、自宅のアパートの玄関先を遠目にみたら――
ベージュ色の毛のフサフサしたものが横たわっています。
(お~お~!?)
思わずのけぞってしまいました。
(なんでダックスフントが?)
遠目には、たしかにダックスフントが寝そべっているようにみえたのです。
体毛がベージュ色のダックスフントが――
ところが――
そのダックスフント、まったく動きません。
あえて足音を大きくして近づいたのですが、ピクリとも動かない――
(死んでるのか)
数年前に、同じような場所でネズミが死んでいたことがありました。
まさか放っておくわけにはいかず、亡がらを近くの公園に埋めたのです。
暗い気分になりました。
(やれやれ、また埋めないとな。今度のはデカいぞ。ネズミは10センチくらいだったけど、ダックスフントなら50センチはありそうだからな~)
そう思って覚悟を決めて、そのベージュ色の毛のフサフサしているものに近づいていったところ――
それは、ダックスフントではなく、女物のブーツでした。
隣の住人が、雪まみれになっていたのを、横たえて乾かしていたようです。
あ~、ビックリした。
もう少し隅のほうで乾かしておいてほしかったな。