夕方――
駅のホームで電車を待っていたら――
何とも落ち着いた雰囲気の男女二人組みがやってきまして――
どちらも若いのです。
男性が20歳前後――
女性は、おそらく20代中盤です。
男性は黒のジーンズに、白地のTシャツ――
女性は黒のスラックスに、ベージュのニット・ウエア――
どちらも地味な装いなのですが、どちらもサッパリとした輝きを放っていました。
ホームの中央では、カーキ色の作業着の男性が、スポーツ紙を広げておりました。
中年の男性です。
ちょっと恐い感じのオジさんです。
2人がやってくると――
そのオジさんは、次にやってくる電車の乗り換えについて、2人に尋ねました。
すると、
「あ、それは――」
と笑顔でハキハキと答えたのは、女性のほう――
男性は、女性の横で、じっと立っていました。
「どうね」
と、オジさんに感謝されて――
女性は笑顔をたたえたまま、オジさんの前を横切り、僕の前を横切りました。
男性のほうは、ニコリともせずに黙ったまま――
(姉弟(きょうだい)かな?)
と感じました。
気立てのよいお姉さんが、ちょっと落ち込んだ弟さんを誘って、繁華街へ夜ご飯でも食べにいくのか、と――
ところが――
電車がやってきて、その2人も僕も同じ車両に乗り込むと――
その2人は密着して座り、やがて女性は男性の肩に頭をあずけるように上体を傾けました。
(これは、姉弟じゃないな)
途端に――
男性の無愛想な顔が気になりだしました。
(なんでなんだ?)
と――
女性のほうは、あんなに笑顔でハキハキとしているのに――
答えは一つだけです。
あえて申しませんけれど――
……
……
いや――
もう一つありました。
あまりにも仲良くしたがるお姉さんに、少し辟易とはしているのだけれど、内心では、ちょっと嬉しくもあるものだから――
あえて照れ隠しで不機嫌に振る舞っている――
そういう弟さんである――
という答えです。
……
……
そんなわけ、ないか(苦笑