マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

もしも「これしかできない」と答えて

 誰かに、

 ――あなたは、どういう人ですか。

 と訊かれて――
 たった一言、

 ――○○です。

 と答えるのは――
 一見、簡単なようで――
 実は、かなりの勇気がいることでしょう。

 例えば、

 ――△△さんは、お仕事は何をされています?

 と訊かれ、

 ――作家です。

 と答えるのは――
 その「作家」という言葉の持つ尊称の響きを差し引いて考えたときには――
 やっぱり、勇気がいることなのです。

 人は、ふつう、

 ――私は、作家以外のこともできるんだぞ。

 ということを――
 何となく示したいものなのですね。

 逆に、

 ――私は、これしかできないんです。

 と答えるのには、格段の胆力がいる――

 その恐れは、どこからくるのかといえば――
 一つの道を究める難しさからでしょう。

 それは――
 もしも「これしかできない」と答えて、

 ――ふう~ん。それしかできないのに、その程度しかできないんだ~。

 と蔑まれることへの恐怖ですね。