おカネというのは――
便利でもあり不便でもあるのですね。
便利な理由は――
例えば、ある人が、
――気持ち良いお風呂に一回だけ入れることは380円に相当する。
といって――
別のある人が、
――おいしい牛丼を一杯だけ食べられることは380円に相当する。
といった場合に――
この2人にとって、気持ち良いお風呂に入れることと、おいしい牛丼を食べられることとは等価値なのだということがわかるからです。
逆に――
おカネが不便な理由は――
この2人にとって多分それぞれに特別なことであるはずの「気持ちの良いお風呂に入れること」と「おいしい牛丼を食べられることと」とが比べられてしまうからです。
ふつうなら比べられないようなことを比べられるようにしてくれるのがおカネであり――
ふつうなら比べないでも済むようなことをつい比べさせてしまうのがおカネである――
ということですね。
このことを十分に意識しないでおカネにのめりこむと――
必ず、どこかで後ろ指をさされるような気がします。