マル太の『道草日記』

ほぼ毎日更新――

美しいものを美しいと思えなくても

 本当に美しいと思えるものを手に入れて――
 それをいつもそばに置いて眺めるうちに、

 ――なんだ。よくみると、それほど美しいわけではないな。

 と思うようになり――

 いつの間にか――
 まだ手に入れていない“本当に美しいと思えるもの”のことまで、

 ――それほど美しいわけではない。

 と思うようになってしまったとしたら――

 それは――
 不幸せなことでしょうか。

 ……

 ……

 僕は、
(意外に幸せなことかもしれない)
 と思っています。

 ……

 ……

 もちろん、

 ――本当に美しいものを美しいと思えないなんて、惨めで情けないことだ。

 と蔑む向きはあるでしょう。

 が――

 それが――
 本当に美しいと思えるものを手に入れたあとで初めて目にできる光景だとしたら――

(たぶん幸せなことだ)
 と――
 僕は思うのです。

 ……

 ……

 おそらく、

 ――足るを知る。

 の戒めの別の側面ないし裏面を――
 僕は指摘したいのだと思います。